え?変わらないの?記述式問題の延期?
令和元年12月17日(火) 萩生田文部科学大臣の閣議後記者会見で
「2020年度の大学入学共通テストでは、記述式の問題導入を延期する」
という発言がありました。
つまり、大学入試改革一期生である「令和3年の大学入試」では「記述式問題」を問わないということです。
多くの予備校や高等学校では、この記述式における対策を検討してきました。
文部科学省はなぜこのような決断に至ったのでしょうか。
その原因を探っていきます。
なぜ延期になったのか
まず、「記述式」の問題が延期になった理由を下記に示します。
① 採点期日までに質の高い採点者を集めることができない。
② 採点ミスを完全になくすことができない。
③ 自己採点と採点結果の不一致が解消できない。
これら3つの理由が、今回の延期の要因となります。
「採点期日までに質の高い採点者を集めることができない」
これについては、採点事業者に対し、守秘義務や損害賠償制度、機密保持契約による、社会的疑念を抱かせるようなことがないようにするための体制は確保したとのことでしたが、大学入試センター側からの、採点者に対する必要な研修を終えることが、来年度の入試までには間に合わず、採点者の確保が厳しいとのことです。
また、障害のある受験生に対し、解答欄のレイアウトを変更したり、パソコンやタブレットを用いた入力を可能にしたりする受験体制も進めてきたとのことです。
こちらの実施可能か不可能かについて、正式な発表はされてはおりませんが、技術的な面や費用の面、そして、何よりも採点者側の準備は追いついていないだろうと思います。
「採点ミスを完全になくすことができない」
こちらについては、記述式問題を出題する上で最も重要視される内容なのではないでしょうか。以前より行われてきました2度の施行調査(プレテスト)の結果を踏まえ、個人による採点ではなく、組織的で多面的な採点を行える体制を構築。また、専門的な視点をもった人物(教員や教授、塾講師)などによる品質管理チームを結成し、様々なチェックを行うことができれば、大学入試センターは「採点制度の向上を図ることができる」と掲げているとのことですが、採点ミスを完全になくすというのは難しいようです。
やはりこういった原因には、「採点時間」が関わってくるようですが、試験日の変更は多面的に考えて困難だということです。採点時間をしっかりと確保するためには、早めの試験実施を試みなければなりませんが、12月では、高校学習内容を終了できず、なのかつ行事と被ります。1月の一週では、年末年始の時期に重要書類の配送や管理などを確実に行うことが難しいということです。
「自己採点と採点結果の不一致が解消できない」
以前より行われてきた施行調査の検証結果として、国語の自己採点と採点結果が3割不一致となりました。その結果を踏まえた対策として、自己採点動画の配信や正答条件に基づく採点の仕方を記述した資料の提示などをすることなりました。これらによって、一定の改善が見込まれたものの、やはり大幅な改善は難しいとのことです。
また、自己採点を楽にするために、「作問」内容を変えるという取り組みも考えられましたが、それでは論理的な思考や表現力を評価する試験が作れないとのことです。
文部科学省の対策
こういった原因があって、今回の「延期」が決まったわけですが、記述式問題が今後なくなるということはありません。あくまで「延期」ということに注目をして、今後の文科省の対策がどのようなものか確認をしていきましょう。
② 記述問題の在り方や内容の充実作について検討
③ 大学入試において記述式テストは必要
と述べております。
ここから分かることは、「延期された内容をいつから実施することができるのかが不明瞭であるが、記述式問題の出題は今後必ず行う」ということです。
英語の4技能が令和6年入試からと宣言されていますが、記述式問題に関しては、具体的な期日は公表されませんでした。
しかし、少なくとも来年度は記述式はでないということですね。
まとめ
今回は大学入試改革初年度の取り組みである「記述式問題」の導入延期について解説をしました。
文部科学大臣も仰っていますが、こういった変更で一番に苦しむのは「受験生」です。しかし、今までの対策は決して無駄になっていません。誰よりも早く準備をしてきた受験生はきっとこのことについて否定的になるかもしれませんが、そもそも、記述式を学ぶことは、現代で必要とされている資質・能力を養おうとしているのです。
そして、以前とある進学高校の先生からお話を伺いましたが、
「マークシートが出来ない人間が、記述問題などできるわけがない。だから、うちの高校は従来通りマークシート対策を行っていく」
と仰っていました。
確かにその通りだと思います。多少思考のずれはあるものの、記述式問題が解けるということは、それに対する解答を思考し、表現することができるわけですから。それ以上のものはありませんよね。
今回の報道について、受験生には是非肯定的な視点に立ってほしいと思います。
公平性のある、しっかりとした受験体制を確立してほしい。
頑張ろう!
大学入試改革について、こちらの記事も参考にして頂ければと思います。