【小論文の極意】要約の実践的な解説

 

例文をもとにして、要約の方法を実践的に解説します!

  

今回は、要約について、例文を使用して、実践的に解説を行っていきます。

前回、要約についての基礎知識やコツについて、例文を用いずに簡単に説明しましたね。まだ、要約のコツの記事を読んでいなかったら、下記のリンクボタンから飛んで下さい。

 

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では実際に例文を使用して、一緒に要約していきましょう!

 

 

例文を使用して実践的に要約する

 

 
《例文》

①映画『未知との遭遇』のクライマックスは、宇宙人との出会いであった。そして私は思った。これは、現代人の自己自身との出会いではないか、と。
②巨大なUFOからよちよちと歩み出た宇宙人は、まるで老人を思わせる、肉体的に退化したひ弱な存在である。ところが、UFOと一体化した宇宙人は、全能をふるう超人である。現代社会におけるわれわれもまた、同様である。人口環境なしには一日も暮らせない、ひ弱な存在になってしまっているにもかかわらず、全能の機械に自己を一体化させることによって、あたかも自分自身が全能であるかのような錯覚の中で暮らしている。たとえばこの錯覚は、日常のごくささいな瞬間に顔を出す。ビデオに録り損ねて見たい番組が見られないだけでがっかりしたり、自動的に開かないドアの前でふと戸惑うような、日常のごく一瞬を思い出せばよい。
③すでにわれわれは巨大な自然支配力のシステムから構成された人工環境という、母なる胎内で、頭でっかちで、ひ弱な、あのUFOの中の宇宙人になってしまったのではないか。
④もはや宇宙人は、宇宙という外的空間の中の存在ではない。宇宙飛行士に代表されるように、現実の人間が宇宙船にのった宇宙人になる時代を迎えて、すでにわれわれの心は、何時の間にか(宇宙人)化してしまっているのである。

引用:(『モラトリアム人間を考える』 小此木啓吾)

 

 

この文章を要約していきましょう。
要約をする時、まず初めにやらなければならないことは「構成」をつかむことです。

構成をつかむとは、

「組み立てられたまとまった要素の塊を、分解して、どこで何を言っているのかつかむ」

ということです。
では、今回の文章ではどのようになっているでしょうか。例文に段落番号をつけているので、形式段落に①~④の順に、何を言っているのか解説します。

 


 

①では、「現代人の自己自身との出会いではないか」と筆者の意見を提示しています。さらに「ではないか」という疑問表現をすることで、これからこの問いについて論理展開していくということがわかりますね。

つまり、①は「話題の提示と筆者の意見」ですね。

 


 

②では、「UFOからよちよちと歩み出た宇宙人は、まるで老人を思わせる」と宇宙人と人間を類似的なものとして述べ、「UFOと一体化した宇宙人は、全能をふるう超人」と宇宙人の特徴について語る。

さらに「現代社会におけるわれわれもまた、同様である」と、宇宙人と現代人の特徴が同一であることに日常の具体例を用いて説明していますね。ここでは、「宇宙人」出現は「現代人の自己自身との出会い」であるという筆者の意見を根拠立てて説明しています。

つまり、②は「筆者の意見の根拠」ですね。

 


 

③では、「すでにわれわれは」「UFOの中の宇宙人になってしまった」と言っています。そして、その理由は「人工環境」によるものであり、私たち人間は、「人工環境により、宇宙人になってしまった」と書いてあります。

つまり、③は「根拠のまとめ」をしています。

 


 

④では、「宇宙人は、宇宙という外的空間の中の存在ではない」と今までの根拠から推測できる意見を主張し、その理由を、「すでにわれわれの心は、何時の間にか(宇宙人)化してしまっている」からと述べている。最終段落では、「宇宙人」が「外的空間の中の存在ではな」いのは、「すでにわれわれの心」が「宇宙人化」していしまっているから。したがって、「宇宙人」は「現代社会」における「自己自身」を示すという筆者の意見につながる。

つまり、④は「まとめと筆者の意見」ということになります。

結果として、この例文の構成はこのような流れになります。

《構成》

①「話題の提示と筆者の意見」

②「筆者の意見の根拠」

③「根拠のまとめ」

④「まとめと筆者の意見」

 

次は重要表現を見つけましょう!!

 

 

 

重要表現の見つけ方

  

 

重要表現とはキーセンテンスのことです。
ある文章の中で重要な位置を占める言葉。つまり、鍵となる言葉を見つけ出し、それを抜き出します。

では、例文におけるキーセンテンスを見つけ出していきましょう!

 

 

「話題の提示と筆者の意見」

 

映画『未知との遭遇』のクライマックスは、宇宙人との出会いであった。そして私は思った。これは、現代人の自己自身との出会いではないかと。

赤のマーカーが引いてある箇所がここでのキーセンテンスになります。

「話題の提示と筆者の意見」部分では、大半がキーセンテンスになります。簡潔にこの部分で何が言いたいのかが分かる部分だけを抜き出してくれば良いのです

「そして私は思った。」に関しては、入れなくても筆者の話題提示と意見は伝わりますよね?そういった不要な部分はキーセンテンスになりません。

 

「筆者の意見の根拠」

 

巨大なUFOからよちよちと歩み出た宇宙人は、まるで老人を思わせる、肉体的に退化したひ弱な存在である。ところが、UFOと一体化した宇宙人は、全能をふるう超人である。現代社会におけるわれわれもまた、同様である。人口環境なしには一日も暮らせない、ひ弱な存在になってしまっているにもかかわらず、全能の機械に自己を一体化させることによって、あたかも自分自身が全能であるかのような錯覚の中で暮らしている。たとえばこの錯覚は、日常のごくささいな瞬間に顔を出す。ビデオに録り損ねて見たい番組が見られないだけでがっかりしたり、自動的に開かないドアの前でふと戸惑うような、日常のごく一瞬を思い出せばよい。

 

ここは、本論にあたる部分なので、文章中で最もボリュームのある部分です。まずここでのポイントは「具体例」を削ることです。「たとえば~」以降は、読者により分かりやすく伝えるため、日常の出来事を例にして、筆者の根拠説明をしています。

この部分はキーセンテンスを探す際には必要ありません。「たとえば~」「仮に~」「もし~」などの言葉のあとは、キーセンテンスとはならないので注意してください。今回も丸々省きました。

キーセンテンスとした箇所は、「筆者の意見」に直接的な根拠を与えている箇所です。筆者の意見は「宇宙人との出会い」=「自己自身との出会い」です。これを直接的に根拠立てている内容が。

 

「宇宙人は、全能をふるう超人」
「現代社会におけるわれわれもまた、同様」
「全能の機械に自己を一体化させることによって、あたかも自分自身が全能であるかのような錯覚の中で暮らしている。」

の3つですね。


まず、筆者の意見を根拠立てるためには、「宇宙人」と「人間」の関係については触れなければなりません。なぜなら、両者が同じ関係にあると意見しているのだから、両者の特徴について触れなければ、何を言っているのかわからないからです。そのため、本文中で「宇宙人」と「人間」の共通点を抜き出します。この共通点はキーセンテンスです。

さらに、「宇宙人がひ弱ながら全能であり、人間も同様である」理由も答えなくてはなりませんね。ここが最も大切な部分です。

「人間」がひ弱で全能な理由を一番明確に示している箇所は、「全能の機械に自己を一体化させることによって、あたかも自分自身が全能であるかのような錯覚の中で暮らしている。」この部分ですね。完結的に根拠を述べています。

「人口環境なしには一日も暮らせない、ひ弱な存在になってしまっている」の部分を省きましたが、ここをキーセンテンスとしなかった理由は、この文章では、「ひ弱」な存在の説明しかできていないからです。前者では、人間と宇宙人が共通している点「ひ弱」「全能」という内容を網羅しています。

この決定的な違いから、簡潔的に述べられているのは、前者の「全能の機械に自己を一体化させることによって、あたかも自分自身が全能であるかのような錯覚の中で暮らしている。」であると判断します。根拠に必要な要素を満たしているかということが最も重要です。

 

「根拠のまとめ」

 

すでにわれわれは巨大な自然支配力のシステムから構成された人工環境という、母なる胎内で、頭でっかちで、ひ弱な、あのUFOの中の宇宙人になってしまったのではないか。

 

文章量が少ないのですが、ここでのキーセンテンスも赤マーカーの部分です。キーセンテンスを見つける際に、気を付けたいことは、細かな説明は省くことです。

いちいち「巨大な自然支配力のシステムから構成された人工環境という、母なる胎内で、頭でっかちで、ひ弱な」と入れる必要はありません。なぜなら、これは「私たちはすでに宇宙人である」ということを言いたいに過ぎないからです。

細かな説明は要約には必要ありません。
抽象的に表現された文章を抜き出してくれば良いだけです。

 

 

「まとめと筆者の意見」

 

もはや宇宙人は、宇宙という外的空間の中の存在ではない。宇宙飛行士に代表されるように、現実の人間が宇宙船にのった宇宙人になる時代を迎えて、すでにわれわれの心は、何時の間にか(宇宙人)化してしまっているのである。

 

最後のまとめですね。
上記でもお話してきた通り、キーセンテンスを抜き出すというのは、最も抽象化された内容を抜き出してくることです。この部分でも宇宙人の説明がされていますが、まとめで一番筆者が言いたいのは「私たちが宇宙人化している」ということです。

これ以外は、そのための肉付けに過ぎません。「結局のところ何が言いたいの?」という意識を持って、文章を消していけば、残ったものが必然的にキーセンテンスになります。

「この文はないと意味が通らなくなる」

と思うものだけ残すのです
「もはや宇宙人は、宇宙という外的空間の中の存在ではない。宇宙飛行士に代表されるように、現実の人間が宇宙船にのった宇宙人になる時代を迎えて」省いた文章は、必ずしも入れなければならない文章ではありません。

以上の構成要素から生まれた「キーセンテンス」を並べると下記の様になります。

 

話題の提示と筆者の意見

・「映画『未知との遭遇』のクライマックスは、宇宙人との出会いであった。」
・「これは、現代人の自己自身との出会いではないか」

筆者の意見の根拠

・「宇宙人は、全能をふるう超人」
・「現代社会におけるわれわれもまた、同様」
・「全能の機械に自己を一体化させることによって、あたかも自分自身が全能であるかのような錯覚の中で暮らしている」

根拠のまとめ

・「われわれは」
・「UFOの中の宇宙人になってしまった」

まとめと筆者の意見

・「われわれの心は」
・「(宇宙人)化してしまっている」

 

では次に簡潔な文章でまとめていきましょう!

 

 

簡潔な文章にまとめていく

 

 

キーセンテンスを抜き出したら、いよいよまとめです。
簡潔で分かりやすい文章にしていきましょう!

ところで、「簡潔で分かりやすい文章ってどうすれば書けるの?」という意見が出てくると思いますので、先に解説を入れておきます!簡潔で分かりやすい文章を作り出すためには、「接続詞」を効果的に使用しましょう!

 

接続詞についてはこちらをご覧ください!

 

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今回のキーセンテンスも接続詞でまとめていきます!

 

 映画『未知との遭遇』での宇宙人との出会いは、現代人の自己自身との出会いではないか。つまり、宇宙人が全能をふるう超人であることと、現代社会におけるわれわれが同様ということである。なぜなら、全能の機械に自己を一体化させることによって、あたかも自分自身が全能であるかのような錯覚の中に暮らしているからだ。そう考えると、われわれはUFOの中の宇宙人になってしまったのではないか。われわれの心は宇宙人化している。

 

(199文字)

 

200字要約であれば、このようにすればいいですね。正直キーセンテンスを抜き出せれば、ここは何とでもなります。言い換えの時に使う「つまり」、理由を述べるときに使う「なぜなら~だから」、それを受けて使っている指示語表現「そう考えると」これを使用しただけで、上手いこと文章がまとまりました。簡潔で短い文章のなっていますね!

ちなみに100字要約をしたらこんな感じです!

 

宇宙人との出会いは、現代人の自己自身との出会いである。なぜなら、全能の機械に自己を一体化させることによって、自分自身が全能であるかのような錯覚の中に暮らしているからだ。人間の心は宇宙人化している。

 

(98字)

 

これは100字要約です。200字要約からさらに文章を削りました。この作業をどのようにして行ったのかというと、「浮いている文章」を見つけ出すことです。文章全体を俯瞰的に見て、「浮いている=要らない文章」を見つけ出します。

それを削っていくとこのように完結された短い文章が出来上がります!

 

 

 

まとめ

 

 

どうでしたか?
今回は、要約を実践的に解説しました!要約力については、前回説明したとおりです!人間が生きる上で必要な力だからこそ、常日頃から頭を整理する習慣をつけてほしいと思います。そうすることによって、物事を考えるときに非常にスムーズになりますし、合理的な考え方もできるようになるはずです!

ここで紹介した要約の実践に関しては、これからもまだまだ他の例文を使って解説していきますので、お楽しみに!

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